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照れまん君の俳句歳時記 「椿」 パートⅡ 若き日の火口死火山藪椿 照れまん
(1)
近所の椿 品種名不明 08 04 12
「椿」 は万葉集の時代から、和歌に読まれているのに、その後は
イマイチ人気が出なかったようです。
室町時代から江戸時代になって、ようやく観賞花として注目されるように
なりました。
二代将軍 徳川秀忠公が、ことのほか愛好されたらしい。
それで、ようやくブームに火が付いたようです。
それまで、どうして花として人気が出なかったのでしょうか?
美しい花なのに、ちょっと不思議な感じがします。
椿は古くより、椿油を取る為の植物でした。
日本の椿油は高品質で、遣隋使の頃より貴重な献上品であり、
貿易輸出品だったようです。
薬、燃料、化粧品、食用油 として、珍重されたようです。
その他にも、木材は兵器として、灰は染色に使われたそうです。
それで、観賞する花としてより、実用的な植物として見られていたのでは
ないでしょうか。
花としては、格が低いとみなされていたのかも知れません。
それが、江戸時代にようやくブレイクします。
絵入りの図鑑がいくつか出版されます。
その中で、烏丸光弘の著した「椿花図鑑」には、619種類の椿が紹介
されているそうです。
江戸時代にはすでに、そんなに多くの品種があったのですね。
(2)
近所の椿 品種不明 08 03 31
折角ですから、椿の載っている万葉集の中の歌を 三首 原文で
書いてみます。
○ 河上乃列々椿都良々々尓雖見安可愛巨勢能春野者
万葉集 巻一 五六 春日蔵首老(かすがのくらびとおゆ)
この歌を、現代風に書くと、
「河上のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野は」
訳= 河上や川岸に連なって咲いている椿。何と美しいのだろう。
こぜ の春の野原はいつまで見てもあきないなあ・・・・。
この歌を踏まえて、つぎの歌が詠まれたようです。
○ 巨勢山乃列々椿都良々々尓見乍思奈許湍乃春野乎
万葉集 巻一 五四 坂人人足(さかとのひとたり)
「巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ思(しの)はな巨勢の春野を」
訳 = こせ山に椿の咲く頃は、春野も美しいことだろう
二首目の歌はとても有名ですよね。椿といえば必ずこの歌が書かれています。
一首目・二首目はどちらも万葉集前期の歌。
これを踏まえて、万葉後期に次の歌が詠まれています。
○ 安之比能夜都乎乃都婆吉都良々々尓美等母安可米也宇恵弓家流伎美
万葉集 巻二十 四四八一 大伴家持
「あしひきの八つ峯(やつを)の椿つらつらに見とも飽かめや植ゑてける君」
訳 = 椿の咲く山々も美しいものですが、椿を植えているあなたこそ、いくら
見ていても、見飽きることはありませんよ。
三首目は強烈なほどの恋の歌ですよね。
~つらつら椿つらつらに~ は、とてもユニークなフレーズ。
今読んでも、とても面白いのですから、万葉の頃には、大受けしたに違い
ありません。
私の勝手な想像ですが、現在に例えるなら、流行語大賞になるような言葉
だったのではないでしょうか。
それ故、色々な人がこの言葉を使って和歌を詠んだのでしょう。それが、
ほんの僅か万葉集に残ったのではないでしょうか。
「つらつら椿」はその後1000年たってもちゃんと生き残っています。
寝て起て我もつらつら椿哉 小林一茶
(3)
臙脂色に近いやや赤の濃い椿 08 03 31
さて、いよいよ俳句です。俳句では 「椿」 は春の季語。
椿 の季語の傍題を書いて見ます。
「紅椿」・「白椿」・「一重椿」・「八重椿」・「乙女椿」・「藪椿」・「山椿」・「雪椿」
「玉椿」・「つらつら椿」・「落椿」・「散椿」(ちりつばき)
つらつら椿はちゃんと俳句の季語に生き残っています。
その他、 「寒椿」・「冬椿」は冬の季語。「夏椿」は夏の季語です。
江戸時代の椿の句を少し、紹介してみます。
落ざまに水こぼしける花椿 芭蕉
鶯の笠落したる椿かな 芭蕉
上の二句目、「梅に鶯」ならぬ「鶯に椿」。鶯は梅の花で笠を編むとか。
それが、椿の花で笠を編んで、落としてるよというのです。
梅の花に比べて椿の花は重いので、笠にしようと思っても落してしまうという
面白み。
暁のあられ打ちゆく椿かな 蕪村
椿落ちてきのふの雨をこぼしけり 蕪村
とりとめた盛りももたぬ椿かな 一茶
我門に痩我慢して咲く椿 一茶
江戸時代に椿の句は、桜や梅に比べると、かなり少ないようです。
(4)
近所の白椿 08 04 05
続いて、明治以降の句を見てみます。
椿といえばこの句、学校でも習う有名な句。
赤い椿白い椿と落ちにけり 河東碧梧桐
河東碧梧桐さんは正岡子規の弟子。この句は子規の句会に出された句。
高浜虚子も正岡子規の弟子ですが、子規の死後暫らくして、碧梧桐と虚子は
ライバル関係になります。
その高浜虚子の句も載せてみます。
ゆらぎ見ゆ百の椿が三百に 高浜虚子
(5)
寒椿
虚子は大変に椿を愛好したようです。
そのほかにも、飯田蛇笏や石田波郷も椿を愛好したとして知られて
いるようです。
椿には、いい句が沢山ありますので、近代の俳句を幾つか載せてみます。
はなびらの肉やわらかに落椿 飯田蛇笏
岩すべる水にうつぶす椿かな 高野素十
掃き寄せて乙女椿の山つくる 佐野青陽人
崖下の古庇にも落椿 三好達治
(ふるびさし)
ひとつ咲く酒中花はわが恋椿 石田波郷
最後の句の「酒中花」は椿の品種名のようです。
そして、波郷の遺句集の題名にもなっています。
(6)
中に小さな虫が居ます 寒椿
大島のつらつら椿夜もなほ 中川宗淵
(つらつら椿の表記がこの句では、つら/\椿 のように繰り返しの く の字
の大きいのが、縦書きに書かれています)
つらつら椿 というのを見ていたら、私も一句作ってみたくなりました。
きぬぎぬのつらつら椿いそいそと 照れまん
お粗末ですね。意味は言いません。若かれし頃の・・・・・。
お口直しにもう一句。
病みし手に乗せて崩れぬ落椿 照れまん
1枚目の写真の椿、真ん中が閉じています。
何度か通ううち、真ん中が開いた花を見つけましたので、その写真を下に
載せてみます。
(7)
昔はあまり椿の花は活け花には使われませんでしたが、最近は普通に
活けられています。
最後に、我が家の藪椿を・・・・・。
(8)
08 04 04
絶筆のフーガの技法落椿 照れまん
椿は古くからありますので、書きたいことが多くて、書ききれませんでした。
我が郷里の作詞家、星野哲郎氏の作詞した 「アンコ椿は恋の花」。
それから、オペラの「椿姫」など、書けませんでした。
また機会がありましたら、寒椿や夏椿を載せてみたいと思います。
「椿」パートⅠ と 「椿」パートⅡ と大変長い文章になりました。
お詫びしつつ、つらつら椿つらつらと・・・・・・。
つらつらと慮りまするに・・・・・・・、これからも宜しくお願いします。
御覧下さいまして、ありがとう御座いました。
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